▼「地域主権改革」による公営住宅の変質

 

 (1)入居はさらに狭き門に

 

 公営住宅の入居収入基準に関し、2010年の政令の改定にともなって、それまでの所得月額20万円以下から15万8千円以下へと引き下げられた。基準を引き下げ、入居対象者を狭めても、依然として公営住宅への入居は狭き門となっている。「市営住宅に何回も申し込んでいるが抽選に当たらない。」という声は少なくなく、地方自治体によっては、競争率は20倍ともいわれ、とくに単身者向けは30倍を超えるところも存在する。

 

 こうした現状のもとで、「政令で定める金額を超えない」範囲で条例で制定可能となればどうなるか。自治体によっては応募倍率が高いことを理由に、収入基準がさらに引き下げられ門前払いがすすむことにより、公営住宅への入居範囲を狭くし、入居者の居住の権利が脅かされる可能性が出てくる。

 

 さらに、入居収入基準が引き下げられ、退去を迫られるおそれもある。

 

 (2)困難になる維持・修繕・改修

 

 公営住宅の維持・修繕・改修は、現状でも不十分だが、整備基準の条例委任を認め地方まかせにすることにより、修繕,改修はさらにおろそかになる可能性がある。公営住宅に関する「国土交通省令で定める整備基準」とは、「公営住宅等整備基準」(最終改正2009年3月)であり、その第3条では、良好な居住環境の確保と題し、「安全、衛生、美観労を考慮し、かつ、入居者等にとって便利で快適なものとなるよう整備しなければならない」と定める他、第9条では住戸の基準として「公営住宅の1戸の床面積は19㎡以上とする」とし、さらに浴室などの設備やバリアフリー化・耐震化対策も定められており、入居者の安全に安心して居住する権利の実現のための基準が定められれている。かかる基準以下の旧宅においては、修繕や建て替えが必要であるが、自治体によっては「財政難」を理由に先延ばしされている公営住宅が少なくないのが現状である。

 

 こうした状況のもとで、国の定める整備基準を廃止し、単に「基準を参酌して」条例で整備について制定可能となれば、入居者の安全に安心して居住する権利が脅かされることになりかねない。

 

 このように、「地域主権改革」における公営住宅法の見直しは、居住の権利、安心して住む権利(居住権)を脅かすことになる。

 

【※自由法曹団の意見書『「地域主権改革」でくらしはどうなるか』の「第6 公営住宅」より。全文はこちら】