国の機関でこそ全国同一の運用が可能

 

 労働基準法による労働基準監督官の権限は、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」(労働基準法1条1項)労働条件の最低基準を事業者に遵守させるために、地方の実情にかかわらず全国同一でなければならない。憲法27条2項は勤労条件の基準を法律で制定することを定めており、国が法律により基準を設定するだけでなく、法律の適用場面でも国の事務とすることが憲法上の要請である。勤労条件の基準を法律で定めても、その適用が地域ごとに異なることになれば、憲法14条の平等原則にも反する。

 

 公共職業安定所における無料職業紹介事業も、労働者の職業選択の自由や勤労の権利を保障するために実施されているものであり、地域によって格差がもうけられてはならない。

 

 「地域主権改革」による労働行政の後退

 

 国の機関の廃止による地域格差の拡大

 

 労働基準行政においては全国同一に法が執行されなければならないのに、国の機関が廃止されて地域格差が出るのは、憲法の平等原則に反するだけではく、労働者の有する勤労の権利を危うくするおそれがある。たとえば、厚生労働省は業務取扱要領を定めてこれに基づき労働行政を全国同一の基準で行っているが、これが地方ごとにおこなわれるようになれば、県により残業時間の算出や割増賃金を支払う指導の基準に差異が生じるおそれがある。

 

【※自由法曹団の意見書『「地域主権改革」でくらしはどうなるか』の「第9 労働」より。全文はこちら】